【毛髪診断士に聞く】切れ毛・枝毛の原因と予防法
20代のころから枝毛を割いたり毛先の白点(プチっと切れる箇所)を引っ張ってみたりと、切れ毛・枝毛が目につくものの特に気にせず過ごしてきた私ですが、どうも最近、そんな髪の毛が増えているような気がします。
ヘアアイロンが悪い?乾かし方?それとも年齢だから仕方ないこと?思い当たることが盛りだくさんです。
そこで!本日は毛髪のプロ・毛髪診断士であり メーカーとして化粧品の開発にも携わる山川さんに、中島(40代女性)の髪習慣から見える問題点とアドバイスを教えていただきたいと思います。
【切れ毛・枝毛】とは
中島:よろしくお願いします。紫外線のお話をお伝えしたとき(「白髪や薄毛、乾燥の原因にも…紫外線ダメージのお話です」)もそうでしたが、『髪で困ったときは山川さん』のロジックが完成している中島です。
山川:(笑)どうも、毛髪診断士の山川です。よろしくお願いします。
今日は切れ毛・枝毛のことですね。まずはそのメカニズムを簡単にお伝えしますね。
メカニズム
切れ毛・枝毛は毛髪のたんぱく質が損傷することで起こります。
毛髪はたんぱく質で構成されていることはご存じですよね。乾燥や紫外線などで髪の一番外側にあるキューティクルが傷つくと毛髪内部を守る機能が低下してしまい、もっと内側にあるコルテックスやメデュラなどの髪の芯の部分を構成するたんぱく質が流出してしまいます。
毛髪内が空洞化し構造が弱くなることで、切れやすい・折れやすい髪になってしまうんです。
中島:山川さんの直筆「毛髪の図」ですね!
毛髪自体を詳しく知りたい方はぜひこちらの記事もご覧ください。
「いいトリートメントの条件。裏面表示で選ぶ時の参考に!」
気になることは何ですか?
山川:たんぱく質の損傷は熱的、物理的、化学的に分けられます。中島さんがご自分の髪生活の中で、気になる点はどんなものですか?
中島:ドライヤーで乾かした後、以前より乾燥が気になります。髪からある程度は離して使っていますが、乾かした後に枝毛が増えているような気がして。ヘアアイロンも使いますが、数秒しかあてていないのにやっぱり切れ毛・枝毛が増えていると思います。
山川:ふむふむ。
中島:あとは髪の手触りですが、トリートメントが合っていないからか少しごわつくことがあります。ちゃんとブラッシングをしているつもりなのに髪が絡まったり…毛髪が細いからでしょうか。
山川:トリートメントというよりシャンプーにも原因があるかもしれませんね。ブラッシングも、使うブラシ次第で良くも悪くもなりますよ。
中島:えっ!?
山川:さきほど「たんぱく質の損傷は、熱的、物理的、化学的に分けられる」とお伝えしましたが、順を追ってご説明しましょう。
【切れ毛・枝毛】原因と予防法
熱的損傷
その名の通り、熱によってもたらされる損傷です。
中島さんが使用されているのはヘアアイロンとドライヤーでしたね。その損傷の原因と考えられる予防法についてお話しましょう。
①ヘアアイロン
原因
ヘアアイロンの温度が高くかつ時間が長いと、当然ながら毛髪に損傷を与えます。ヘアアイロンついて興味深い実験結果があるのでご紹介しますね。
(ヘアアイロンの温度と毛髪の強度変化について)
150℃で3秒間挟んだところ、毛髪の強度にほとんど影響はなかった。
180℃で3秒間では8.4%の低下がみられた。
200℃で3秒間では24.1%も低下している。
150℃で20秒間では12.3%低下した。於)社団法人毛髪科学協会
予防法
よって、ヘアアイロンは120~140℃の範囲で短時間使用することで毛髪の損傷を抑えることができます。
山川:中島さんの使用温度とお時間はどれくらいですか?
中島:180℃で3秒です…それでも十分低温だと思っていました。美容師さんは200℃をあてることもあるので…
山川:おそらく美容師の方は同じ箇所に3秒も当てていないと思いますよ。それに美容室でセットをされるのは月に1度以下の頻度ではないでしょうか。毎日8.4%ずつ毛髪の強さが低下すると、単純計算で1週間で強度は半減!日々の使用法の方が髪にとっては重要だと思いませんか?
中島:確かにそうですね。でもあまり低い温度だとクセづけが難しいんです。
山川:毛髪は高い温度から冷えることで形状を記憶します。140℃で5~6秒あてたら一旦ヘアアイロンを髪から抜いて、巻いた形のまま髪束を手のひらでキープして下さい。温かさがなくなれば次を巻く、というようにすれば傷みも少なく使用できますよ。
②ドライヤー
原因
毛を乾かそうとドライヤーを同じ箇所に何度もかけると、乾燥後に更に熱を加えることになってしまうので毛髪の損傷はひどくなります。
予防法
公益社団法人日本毛髪科学協会によるとドライヤーは毛から20㎝以上離して使用することで、毛に与える熱の影響が小さくなり損傷が少なくなります。
中島:確かに…一部分の濡れた髪の毛を乾かそうとして、周りの既に乾いている髪にもドライヤーを当てているかもしれません。ある程度乾いたら、一度ブロッキングして髪の乾きを確認した方が良いのかもしれませんね。
山川:ドライヤーを使う距離はどうですか?
中島:それは毎日意識しているので自信があります。ほら!(ドライヤーを持ってみせる)
山川:ドライヤーの柄の部分からは20㎝程度ですが、熱風が出るところは10㎝も離れていないようですよ。ご自分の「手」と髪の距離ではなく、吹き出し口を意識するようにしてみて下さい。最後は冷風でキューティクルを閉じることもお忘れのないように。
中島:自分で思っているほど、実際に離れてはいなかったんですね。鏡でチェックするようにします。
物理的損傷
毛髪に対して触る・こするなど物理的に接したことによって起こる損傷です。
1度や2度なら気にすることもありませんが、こちらはシャンプーなどの日々 髪に対して行っている行動が原因であることが多いため、どうしてもダメージは避けて通れなくなってしまいます。
また中島さんが気になると言われた髪のごわつきですが、手触りを悪く感じるのはキューティクルが剥げたり不揃いであることが多いんです。様々な摩擦によって髪が傷ついている状態だと思われますので、その主な原因と出来るだけ髪を傷つけないための簡単な予防法をご紹介しますね。
③シャンプー
原因
シャンプーをするときには、毛と毛がこすれ合いどうしても毛髪が損傷します。ですので、いきなりシャンプー剤を付けるのではなく、お湯での予洗いをおすすめします。髪をこすらずに多くの汚れ(埃・脂汚れ)を先に落とすことができますよ。次でご紹介するブラッシングも、シャンプー前に行うことで絡まりを解いて汚れを浮かせる作用があるので是非覚えて下さいね。
また、意外と知られていないのがシャンプーがアルカリ側であると毛髪の損傷はひどくなるということ。pH5付近であると損傷は比較的抑えられます。
そして洗髪時に髪が軋むようなシャンプーは要注意です。ご自分の髪には強すぎる洗浄だと考えて、使用は控えられた方が賢明です。
予防法
●pH5付近のシャンプーを使いましょう。
●使用時に指通りの良いシャンプーを使いましょう。
●毛をこすらないように軽く頭皮を洗いましょう。
山川:中島さんが思っていたようにトリートメントももちろん大切ですが、多くの方がシャンプー時に髪へ負担を掛けていることが多いんです。髪に優しい洗髪方法に変えるだけでダメージの進行を予防することが出来ますよ。
中島:まずは髪を丁寧に洗うことが先決なんですね。ところで『pH5付近』とはどういうことですか?シャンプーボトルには何も書いていませんが、なにか参考に出来るものがあれば嬉しいです。
山川:pH5とは弱酸性です。中でもアミノ酸系洗浄成分のシャンプーは頭皮にも優しく、正しい洗髪方法であれば髪を傷めることも比較的少なくて済むと思われます。品名等に表記してある商品もありますから参考にしてみて下さい。
中島:そして洗うときに髪が軋むようならシャンプー剤を変えてみる、ということですね。頭皮も洗うというのはヘッドスパのことですか?
山川:いえいえ、そんな本格的でなくても大丈夫ですよ。ご自分で指の腹を使いながら軽くマッサージするつもりで頭皮も一緒に洗ってあげて下さい。
④ブラッシング
原因
毛髪の根元から毛先にかけて一気にブラッシングしてとかすと、毛先付近でもつれができることがあります。このもつれをとかす時にとても大きな摩擦が働くことで毛髪が切断されます。
このため毛先に枝毛・切れ毛が多く発生します。
予防法
ブラッシングは毛についたほこりを落としたり、からみつきを直したりするものですので
●毛先から順に最初は荒い目のブラシ(櫛)で少しずつとかしましょう。
●必要以上に行うことや無理なブラッシングは控えましょう。
●ブローローションで髪表面を滑らかにしてからときましょう。
また、ブラッシングをするときのブラシの種類により髪に与える損傷度合は異なります。
豚毛・猪毛>ナイロン製>ポリエチレン製 の順でヒトの毛髪をやさしくときます。
山川:枝毛・切れ毛の最大の原因、それがブラッシングです。毛髪は肌と違って痛覚がありませんから、ついつい扱いが乱暴になってしまいがちな方も多いのかもしれませんね。
中島:時間がなかったり面倒だなと思ってしまって、初手から根元にブラシを入れていました。絡まってもこうグイグイと…(実践中)
山川:ダメですよ!(ブラシを止め没収)
切れ毛になってしまった時の対処法は、それより上の部分から切るしかありません。髪は早い人で1ヵ月に1㎝、年間12㎝しか伸びません。枝毛や切れ毛が少ないことは美しくそろった髪への近道となりますから、整髪前とシャンプー前の5分間、丁寧なブラッシングを少しだけ心掛けてみませんか?(ブラシ返却する)
中島:(教えてもらった方法でブラッシング…)思っていたより短時間で簡単にできますね。ブラシを数種類用意するのは面倒ですが、一度揃えてしまえば習慣づけられそうです。
山川:面倒って言わない(笑)
化学的損傷
薬液を使用し、毛髪内部にまで影響を及ぼし起こる損傷の総称です。
様々なパーマや染色などを頻繁に利用する、という方には特に多い損傷だと思われます。
⑤パーマ・ヘアダイ
原因
パーマ・ヘアダイの時には毛髪のシスチン結合を切断する目的でアルカリ剤に浸します。このときシスチン結合だけでなく たんぱく質のペプチド結合まで切断し、毛髪を損傷します。
予防法
パーマ・ヘアダイを極力控える。また、ヘアダイに代わりにヘアマニキュア、ヘアカラーを利用するようにしてはいかがでしょう。
中島:ヘアダイというと白髪染めによく使われるものですね。ヘアカラーでは白髪が染まらない、という場合はどうすればいいでしょうか?
山川:少量の白髪であれば、全体的にヘアカラー+白髪部分にヘアダイというように美容師さんに相談されてみてはどうでしょうか。髪が傷まないようにお願いしたい、という希望もきちんと伝えましょう。専門の方々に相談するというのは大切なことですよ。
裏ワザ?乾燥髪に応急処置
山川:空気が乾燥する季節には髪も乾燥しやすくなりますから、摩擦や静電気などで枝毛や切れ毛が増えないように保湿することも大切です。気にされていたトリートメントも、洗い流さないオイルタイプなどが良いかもしれませんね。外出先でも使用できるミニサイズを用意しておくと便利だと思いますよ。
中島:実は私、あまりにパサつくときには、ハンドクリームを塗ったあとにその手で毛先を撫でるようにしています。あくまで外出中の応急処置ですが、携帯しやすいし馴染みもいいような気がするんです。これって髪にどうなんでしょうか。
山川:成分を見ないと断言は出来ませんが、毛先であれば問題ないと思います。
これ、使ってみますか?
中島:ハンドクリームですか?
山川:プラセンタ配合のハンドクリームです。「女性の手を優しく美しく整えられるもの」を目指してます。開発中なのでお試し1号ですよ。どうぞ。
中島:すごい、サラサラなのにツルツル!しっとり感が素晴らしいですね。このにおいがプラセンタですか?手に塗るなんて贅沢ですけど(笑)
毛先もスルンとまとまりますね!
山川:全てのハンドクリームが髪の毛にとって安全とは言えませんが、応急処置として使用する場合には以下の2点に注意して下さいね。
●使用する時には毛先中心で頭皮には付着させないこと
●使用したあとの洗髪はいつもより丁寧に行うこと
さいごに
山川:いかがでしょう。少しは中島さんのお悩みのお答えになりそうですか?
中島:はい!枝毛や切れ毛のメカニズムから説明していただけたので、そうならないように、今後は肌と同じように髪を丁寧に扱うところから始めたいと思います。大切なのは細かな気遣いの積み重ねなんですね。
次回は年齢を重ねた女性の髪についてもご相談させていただければ嬉しいです。
山川:私の自己紹介は「いつも健やかな髪や肌を願って化粧品を開発している山川」ですから(笑)お答え出来ることがあればお受けいたしますよ。本日はありがとうございました。
中島:こちらこそありがとうございました!
取材・監修協力:山川 雅之
●公益社団法人 日本毛髪科学協会 毛髪診断士 ●公益社団法人 日本毛髪科学協会 認定講師
中島ゆき
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