日本酒の味を決めるD-アミノ酸、注目の機能性
先週は、日本酒の選び方として糖質が気になる人の目線で考えてみました。
今週も引き続き日本酒からの話題です。
近年の分析技術の進歩により、日本酒に含まれるD-アミノ酸が様々な生理機能と関連していることが分かってきたというお話です。
目次
- D-アミノ酸は日本酒の味を決める成分
- D-アミノ酸の機能性
- さいごに
D-アミノ酸は日本酒の味を決める成分
アミノ酸といえば、私たちの体を作るタンパク質を構成するための欠かせない成分です。
従来、機能性があると認識されていたのはL-アミノ酸というものです。
L-アミノ酸、D-アミノ酸とは、同じ組成で鏡合わせをした形をとる鏡像異性体と呼ばれるものです。
左右対称な構造で、それだけの違いで機能性や呈味性(味)に違いがあることが近年分かってきました。
D-アミノ酸は野菜や果物、ビールやワイン、ココアなどにも含まれていることが明らかにされており、日本酒にも含まれていることが分かりました。
アミノ酸別にみると、昆布の旨味成分であり化学調味料として広く利用されているグルタミン酸はL-グルタミン酸であり、このD体にはほぼ呈味性がないことが分かっています。
一方で、アラニン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、ロイシン、バリンなどはL体よりもD体の方が強い甘味性をもっていることが分かっています。
そしてこのD-アミノ酸は発酵の工程で増量するとされており、乳酸発酵することでより増量します。
乳酸菌の種類によってどのD-アミノ酸が多く作られるかが変わってくることが分かっています。
日本酒製造の中でも、特に生酛造りという昔ながらの製法においてD-アミノ酸が多く含まれていることが分かっており、生酛造りならではの乳酸菌によってD-アミノ酸の構成比を変え、味に特徴を出しているのでしょう。
D-アミノ酸の機能性
日本酒の味に違いを生むD-アミノ酸ですが、機能性の面でも近年注目を浴びています。
D-セリンは、動物の中枢神経系で重要な役割を果たしており、統合失調症やアルツハイマー症などとの関連も報告されています。
D-アスパラギン酸は、内分泌あるいは神経内分泌器官での生理的な機能が明らかにされています。
特に気になるのが、美容面での機能性です。
D-アラニン、D-アスパラギン酸には、人の皮膚の重要な構成成分の産生を促進する効果があると考えられています。
特に、ハリや弾力のある肌に欠かせないコラーゲン産生の促進や肌細胞への抗酸化作用が報告されています。
さいごに
D-アミノ酸については現在も機能性の面から呈味性の面まで研究が進められており、解明されていないことが多いそうです。
もともと日本酒は美容に良いというイメージもありますが、今後の研究により「美容によい日本酒」が販売されるかもしれません。
日本酒以外にも、D-アミノ酸の機能が強化された食品なども目にすることがあるかもしれません。
参考文献
牟田口祐太; 大森勇門; 大島敏久. 乳酸発酵と D-アミノ酸生産. 化学と生物, 2014, 53.1: 18-26.
老川典夫. 日本酒の新たな呈味性成分 「D-アミノ酸」. 日本醸造協会誌, 2015, 110.4: 189-197.
大森, et al. 食品機能成分としての D-アミノ酸の可能性 (バイオミディア). 生物工学会誌, 2012, 90.3: 135.
matsuki_takahiro
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