歯の健康に係るプラーク(歯垢)と歯みがき剤の選択
今回は以前に携わった”液状歯みがき剤”の開発の中から、人工的にプラーク(歯垢)を作製した話を交えて、歯の健康についてお話しします。
目次
- プラークとは?
- 歯みがき剤の選択
- まとめ
プラークとは?
まず”液状歯みがき剤”の性能テストとして洗浄力を評価しないといけないのですが、汚れのモデルの一つとして人工プラークを作製することにしました。
最初はなかなかうまくいかず、最終的にある大学の歯学部から人の口腔内から分離した菌株を入手し、作製に成功しました。
その菌株は、ストレプトコッカス・ミュータンスと呼ばれる虫歯の原因菌とされるものです。ミュータンス菌は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ミュータンス菌の主な特徴を以下に示します。
(1)乳酸を作る(歯を溶かす原因の一つ)
(2)酸性条件下で生存
(3)不溶性のグルカンを作る
この不溶性グルカンと菌体がプラークと呼ばれるものです。
不溶性グルカンは糖の一種であるショ糖(グルコース)を原料にして、ミュータンス菌が出す酵素により作られます。これが虫歯の最大の原因です。
当時行った評価では、培養液(生体組織や菌などの微生物の生育に適した溶液)中にミュータンス菌と一緒にアクリル板(3×4cm)を浸けておくと、一晩でアクリル板にびっしりとプラークが付着しました。
その光景から改めて歯みがきの大切さを痛感したものです。
歯みがき剤の選択
プラークを作り出すストレプトコッカス・ミュータンスは幼児期である2歳前後に親や兄弟から口移しや食器を介して口腔内に存在するようになります。
以後、ミュータンス菌を完全に除去することは不可能と言われています。
しかし、減らすことは可能です。
当時行った殺菌テストで非常に有効な結果を示したものが”ヒノキチオール”という殺菌剤です。
その他にも、歯みがき剤中の発泡剤、洗浄剤として配合されている陰イオン界面活性剤である”ラウリル硫酸ナトリウム”や”ラウロイル硫酸ナトリウム”なども有効に働きます。
歯みがき剤購入の際には参考にして、成分表示を確認して選んでみてはいかがでしょうか。
さいごに
みなさんの口腔内には、虫歯の原因菌が必ずいますので、プラークの蓄積を防ぐには菌を増やさないことが重要です。
特に、就寝中は唾液の自浄作用が弱くなることがわかっています。
殺菌に有効な歯みがき時間は3分以上だと言われています。
就寝前に、プラークの溜まりやすい箇所(歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目など)を入念にブラッシングし、歯の健康を保ちましょう。
川﨑孝治
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