原料メーカーが教える“プラセンタ”の安全性について①<試験>
■心配される危険因子は?
原料となります豚の胎盤(一部馬の胎盤もあります)を取り扱うため、微生物(細菌やカビ)やウィルス、残留農薬(飼料由来)、抗生物質(飼料由来、治療のため)、重金属類などを心配されるのではないでしょうか…
①ウィルス 豚から人へ伝染するものとして、“E型肝炎”や“豚インフルエンザ”などが知られています。これらのウィルスを不活性化させるための条件を、私どものスタッフが国立大学ウィルス研究所に出向しまして、共同で見つけ出し(加熱温度、加熱時間)、製造工程で実施しています。ポイントとしましては、できるだけ“プラセンタ”の劣化を抑える低温加熱、事後に本当にウィルスの不活性化ができたかを保証したいために、製造時の温度履歴を記録として残しています。また、その際に使用する温度計は定期的に外部機関に校正に出して、信頼性を担保しています。
②抗生物質 残留抗生物質の確認には、プレミテスト(オランダ製)を実施しています。簡単に原理を説明しますと、多くの抗生物質やサルファ剤に対して感受性の高い(菌の増殖抑制、死滅させる)Bacillus stearothermophilus(細菌)の発育阻害の有無により判別します。発育阻害があれば残留抗生物質陽性(存在)、発育阻害が無ければ残留抗生物質陰性(存在しない、または検出限界濃度以下である)となります。
微生物、重金属類については次の章でお話します。
■製品試験はどんなことを確認するの?
JHFA(公益財団法人 日本健康栄養食品協会)が定義しています、“プラセンタ”の「品質規格基準」に準じて試験項目は設定しています。
<試験項目>
・性状 色や香りを、試験の担当者が確認します。(官能試験)
・確認試験(ペプチド) ペプチドの存在を呈色反応で見ます。
・純度試験(Pb) 20ppm以下であることを試験します。
・純度試験(As) 2ppm以下であることを試験します。
※重金属類のPb(鉛)、As(ヒ素)などは食物中にも微量に含まれ日常的に摂取されていますが、一定基準を超えて摂取すると排泄が追いつかず、体内に蓄積され中毒を引き起こします。和歌山のカレーへのヒ素混入事件が有名ですが、その毒性を利用して農薬に利用されていました。
・水分 健康食品原料の“プラセンタ”の場合、防腐、殺菌剤等は無添加のため、微生物(細菌、カビ)を抑制するために、重要な監視項目になります。
・灰分 “プラセンタ”に酸を加え、徐々に加熱して(500~600℃まで)有機化合物を燃焼除去することで、金属類や無機化合物量を見ます。
・窒素 “プラセンタ”中のタンパク質、ペプチド、アミノ酸の量が推測できます。(一般的に脂質、糖質成分は窒素を含有しないため)主として製品のスペック(性能)となります。
・微生物(細菌、カビ)自社内または社外(公的機関)で確認試験を実施します。規格は、一般生菌数(3000個/g未満)、大腸菌・大腸菌群(陰性)、カビ(100個/g未満)となっていますが、通常はいずれの菌も検出されません。万一検出された場合、わたしが混入箇所や菌の種類(同定)などについて追跡調査を実施します。
★化粧品原料の“プラセンタ”の場合は、上記試験項目の他に残留ホルモン剤(エストラジオール、プロゲステロン)の確認試験を実施します。エストラジオール(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などは、畜産業において発情周期の同調(コントロール)や肥育(成長促進)のために投与される可能性があります。このため、人への影響を考慮して残留の有無について確認を実施しています。
上の写真は試験室内の試験装置です。右の3台は窒素含量測定用の分解、蒸留装置(中央の1台は兼用でスクラバーと呼ばれる中和装置で酸性のガスを中和します)、左側の2台は純度試験(Pb,As)や灰分測定用の試料をつくるための電気炉、湿式灰化装置です。
■さいごに
このように徹底した内容で、安全性について確認試験を実施していますが、残念ながら、残留農薬については確認できていないのが現状です。今後の課題として検討していきたいと思います。その他に、“プラセンタ”に対して皆さんが心配される要因としては原料(豚)の管理体制、胎盤の受け入れ方法、製造所や製造方法、また臨床試験や治験などの有効性や“アレルギー”について疑問をお持ちだと思います。この内容については次回以降に、お話したいと思います。
川﨑孝治
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