化粧品に使われるクエン酸、その働きと肌への悪影響?
今回の記事のテーマはクエン酸です。クエン酸は化粧品・食品選びの一つの基準として役立つかもしれません。
クエン酸はクエン酸洗浄といったポットにこびりついたカルシウム塩の除去をします。また、人体にとってはエネルギー代謝に必須な成分です。そんなクエン酸は化粧品にも含まれます。はたして、クエン酸は肌にはどのような影響を与えているのでしょうか。
1.名称の由来
クエン酸の「クエン」は日本在来種のミカン科「丸仏手柑(まるぶしゅかん)」の漢名「枸櫞(くえん)」が語源だそうです。英語では「Citrate」で、柑橘類を意味する「Citrus(シトラス)」が語源となります。クエン酸を直接舐めてみると、柑橘類の中でも酸っぱい夏ミカンや橙などの風味を感じ、語源のとおり柑橘類主体の酸であることを妙に納得させられます。
2.キレート効果
「クエン酸」で連想されるものの一つにポットなどのクエン酸洗浄が挙げられます。ポットを長年使用していると、水道水に含まれる二価金属のカルシウムが溶存二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムという白い物質となり、ポットの内壁にこびりついてきます。クエン酸はこれを自身のもつ3つのカルボン酸(-COOH)で、以下のようなイメージでこびりつきを剥がしとります。
そして、一度つかんだ金属をクエン酸はなかなか離しません。金属をつかんだまま水に溶けつづけ、ポットの内壁にこびりつく炭酸カルシウムのような不溶性金属塩中の金属を溶存させることができます。これをキレート効果といい、この効果を持つ物質をキレート剤といいます。化粧品に配合されるキレート剤にはクエン酸のほかにEDTA(エチレンジアミン四酢酸Na)というものがあり、これは自身の持つ4つのカルボン酸で下図のように金属をつかんで溶存させます。カニがはさみで金属を挟んだ様子を形容して、「カニのはさみ」(ラテン語Chela)がキレート(Chelate)の語源となりました。
3.キレート成分体内で分解されなければ悪影響
一度つかんだ金属をなかなか離さないクエン酸も、人体内では、体で必要な部分まで金属イオンを運んでくれます。これはクエン酸が体内で必要な部分で分解され、そこで金属イオンを離すからです。しかしEDTAは体内で分解されません。したがって、体内で金属を一度つかんでしまうとそのまま体外に排出されます。その結果、体内の金属が欠乏します。
4.シャンプーにクエン酸を配合してほんとにいいのか
上記のようにクエン酸は経口摂取では体内に金属イオンを運ぶのに必要な成分で悪影響は与えません。化粧品や医薬部外品にもクエン酸はよく配合されていますが、これらを塗布・洗身などで皮膚に使用する場合、身体に対する影響はどうでしょうか。シャンプーやボディーソープは、肌や毛髪の汚れだけでなく必要な金属も過剰に洗い流し、髪・肌の傷みの原因になる可能性も考えられます。クエン酸の塗布には刺激があるという文献もありますので、肌に使用しないほうが無難と思います。
5.化粧品の裏面表示に留意してみてはいかが
二価の金属は化粧水のような液状のものの中で沈殿を起こしますので、これらを防ぐために、化粧品や医薬品等の外用剤の多くはキレート剤を含みます。しかし、キレート剤による皮膚からの金属流出の懸念は捨てられません。カルシウムやマグネシウム等の二価の金属は皮膚を整えるのに重要な成分です。化粧品が肌に合わなくなるのはキレート剤による肌や毛髪からの金属の流出が原因なのかもしれません。化粧品を購入する際はクエン酸、EDTA等の配合の有無を全成分表示でも考慮してみると肌や毛髪トラブルの解決になるかもしれません。
山川雅之
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