睡眠で肌を再生!今日から始められる上質な睡眠のための方法
日本は睡眠負債大国!?なぜ日本人は眠らない?
2016年に世界的な調査・政策研究所のランド研究所ヨーロッパが、睡眠負債による日本のGDPあたりの社会的経済損失について報じ“睡眠負債”という言葉が一躍注目を集めました。ランド研究所のレポートによると、日本人の16%が6時間未満の睡眠時間であり、これは調査を行った5カ国(日本・米国・イギリス・ドイツ・カナダ)の中で最も高い割合です。また、日本人で睡眠時間が6時間未満の人が7時間の睡眠をとった場合、年間で1380億ドル(約15兆1,800億円)、GDPにすると2.92%の社会的損失が改善されると推計されています。
「日本人の生活時間・2015」によると、日本人の1日の睡眠時間の平均は、平日7時間15分、土曜日7時間42分、日曜日8時間3分。そのほか、経済協力開発機構(OECD)が2014年に世界29カ国を対象に国民平均睡眠時間(15~64歳)を調べた調査では、日本人の睡眠時間は7時間43分で、世界29カ国の中で韓国に次いで2番目に短いことが分かっています。
では、なぜ日本人は眠らないのでしょうか?その理由のひとつは、24時間営業のお店やコンビニが増えたこと。またスマートフォンの普及によって生活の夜型化が進み、就寝時間が次第に遅くなっていることなどが挙げられるます。もうひとつの原因は、日本人の睡眠に対する意識の低さ。日本人には自己犠牲を美徳とする風潮があり、睡眠時間を削ってでも仕事をしてしまう気質があります。
睡眠の役割は「脳の休息」と「カラダのメンテナンス」です。自治医科大学が4,419人の日本人男性を対象に行った調査では、睡眠時間が6時間以下の人と7〜8時間の人を比べると、その死亡率は6時間以下のグループの人の方が2.4倍高くなるという結果が出たそうです。
推奨睡眠時間については、一般的に成人で7~9時間とされています。ですがもちろん個人差がありますから「この時間に達していないから睡眠不足」というわけではありません。
・疲れが取れていない
・日中ぼーっとする
・長時間睡眠をとったのに眠たい
・集中力や判断力が低下している
・コミュニケーションがとれない
・怒りや悲しみの感情をコントロールできない
普段と比べてこのような症状に心当たりがある場合、もしかしたら今の睡眠時間では不足しているのかもしれません。
脳は、私たちの就寝中に記憶の整理をしたり、高ぶった神経を鎮静しようと様々な指令を出しています。傷ついた細胞を修復することもその1つです。眠っている間に分泌される成長ホルモンがタンパク質(アミノ酸)の代謝を促進することで、日々、傷ついてしまった細胞を新しいものへと生まれ変わらせていきます。また眠ることは脳機能を回復させるだけでなく「嫌なことがあっても、ひと晩寝たらスッキリした!」ということがあるようにストレス発散の手段にもなっています。わたしたちは「眠る」という方法で、知らないうちに心身の回復をしているんですね。
ところがそんな睡眠が慢性的に不足してしまうと、効率の良い回復ができずに常に疲労している状態を引き起こしてしまいます。
近年、働き方の問題がクローズアップされているように「睡眠時間を削る」という行為は自分の命を縮めてしまう行為であるということをしっかりと認識し、7〜8時間の睡眠時間をキープする習慣を心がけましょう。
睡眠のカギを握るホルモン「メラトニン」
人間は暗い夜に眠り、明るい昼に目覚めて活動する昼行性の動物です。そのため、体温は昼に高く夜に低いリズムを示します。これに連動し、体温が高いと眠りにくく、低いと眠りやすい性質を持っています。このようなリズムを生体リズムと呼び、人間のほとんどの細胞にはサーカディアンリズム(概日リズム:20〜28時間の周期の生体リズム)に関わる時計遺伝子が存在し、この遺伝子によって調整される体内時計がカラダの中のさまざまなリズム現象をコントロールしているのです。
体内時計に働きかけ覚醒と睡眠を切り替えて自然な眠りを誘うのが「メラトニン」です。脳の松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモンで、“睡眠ホルモン”とも呼ばれています。このメラトニンも生体リズムの支配を強く受けているホルモンです。働きとしては覚醒を抑え込む効果と、深部体温をやや下げる効果があることが知られています。規則的な生活をしていると、暗めの環境であれば、習慣的な就寝時間の1~2時間前から分泌が始まり、眠気を誘ってくれます。ところが不規則な睡眠習慣を続けていると、生体リズムはバラバラになりやすくなってしまいます。
このメラトニンは眠りを誘うほかに、抗酸化作用によって細胞の新陳代謝を促したり、病気の予防や老化防止にさまざまな効果を持つと考えられており、注目されているホルモンのひとつです。
肌によい睡眠ととるためにあらかじめ知っておくといいこと
睡眠には、「レム催眠」と「ノンレム催眠」の2種類があります。「レム睡眠」は、体は眠っているけれど、脳は眠っていない状態で、「ノンレム睡眠」は、体も脳も眠っている状態です。眠りはじめると、まず「ノンレム睡眠」がやってきて、次に「レム睡眠」がやってきます。そのサイクルは1サイクル90分程度で、通常は一晩に4~5サイクル繰り返されると言われています。そして朝方に近づくと、「レム催眠」の時間が浅く長くなり、この「レム睡眠」のタイミングで目覚めると、すっきりと目覚めることができます。このサイクルから逆算して、何時ぐらいに眠り始めるといいかを把握したうえで、就寝時間を決め、習慣づけることも快適な目覚めにつながります。
肌によい上質な睡眠を手に入れるための7つの習慣
①朝、窓際でしっかり光を浴びよう!
生体リズムの強化と正常化には、朝の起床直後の太陽光がもっとも効果的。朝1500~2500ルクスの光を浴びると体内時計からの信号でメラトニンの分泌が止まり、メラトニンの材料であるセロトニン(別名:幸せホルモン)の分泌が促され、活動状態に導かれます。そこで、目覚めたらすぐにカーテンを開けて明るい光を取り込み、体内時計をリセットすることが大切です。メラトニンは朝日を浴びてから(リセットしてから)約16時間後に増え、眠くなってきます。もちろん個人差はありますが、朝日を浴びる時間がその日の夜眠くなる時間を決めているということなのです。
浴びるといっても、直接日光を浴びる必要はありません。朝日の光の強さは屋外では10万ルクス(くもりでも3万ルクス)、室内でも窓際1メートル以内なら3000ルクスとされ、ケタ違いのエネルギーです。くもりの日の照度でも光を感じることができれば十分なのです。
②寝室は暖色系の照明にし、眠る前のスマートフォンをやめよう!
夜に強い光を感じてしまうと、メラトニンの分泌が抑制されてしまいます。ベッドに入る30分前くらいから暖色系の暗めの照明(イメージは薄暗いバーの照明)に切り替えましょう。また、スマートフォンやパソコンのブルーライトはメラトニンの分泌抑制力がもっとも強い波長です。眺めていると覚醒状態に入って、寝つきが悪くなってしまいます。
③寝室に鎮静効果のある香りを取り入れよう!
鎮静作用により入眠を促す効果が期待できる香りとしては、ラベンダー、カモミール、マンダリン、ゼラニウム、サンダルウッド(白檀)、森林の香りなどが知られています。でも、鎮静効果があっても嫌いな香りであれば寝つきを妨害してしまうこともありますので注意が必要です。
④40℃前後のぬるめのお湯に浸かろう!
睡眠と体温には深い関係があります。就寝の30分くらい前にぬるめ(40℃前後)のお風呂に入ると、交感神経の興奮がおさまってリラックスでき、深部体温の下降を促して入眠しやすくなることが報告されています。逆に熱めのお風呂で入浴すると、深部体温が一定の温度に下がるまで寝付けなくなる場合があるため、熱めのお風呂に入る場合は就寝の1時間以上前に入るようにしましょう。
⑤トリプトファン・ビタミンB6を含む食材を摂取しよう!
じつは食事とカラダのリズムとの関係について触れた科学的な情報は非常に少なく、現在までに科学的に証明されている睡眠改善作用のある単一の栄養素としては、アミノ酸の一つであるトリプトファン、グリシン、テアニンなどがあります。トリプトファンはセロトニンの原料になる物質でもあります。加えてセロトニンの生成を助けるビタミンB6の摂取を心がけましょう。トリプトファンもビタミンB6も豊富に含むバナナは快眠のためには大変優秀なフルーツと言えます。
●トリプトファンを多く含む食材…削り節、たたみいわし、煮干し、エメンタールチーズ、車麩、ゴマ、油揚げ、納豆 など
●ビタミンB6を多く含む食材…バナナ、大豆製品、ニンニク、レバー、まぐろ など
⑥毎日の朝食と夕食の時間をほぼ一定に保とう!
食事の時間を一定に保つことで小腸や肝臓に存在する代謝リズムを支配する体内時計が適切に調整され、体温リズムのメリハリも強化されます。このメリハリがはっきりしている人ほど深い睡眠が多く、睡眠も安定しているといわれています。また夕食に大量の脂質を摂ってしまうと代謝リズムが乱れるので避けた方が良いでしょう。
⑦軽いストレッチや深呼吸で安眠のスイッチを入れよう!
快眠スイッチをONにするポイントは「体側を伸ばす」こと。私たちのカラダの側面には東洋医学でいう肝胆系の経路があり、ここを動かすことでストレスが解放されます。また横隔膜を含む胸郭全体が柔らかくなり、動きがスムーズになるので呼吸が深まりやすくなります。副交感神経を優位にする手段の一つに「深呼吸」があります。意識して深い呼吸をすることで、カラダはリラックスしやすくなります。
さいごに
いかがでしたか?光や温度、食事など、あらゆる角度から睡眠について考えてみました。
睡眠中にはさまざまなホルモンが分泌されますが、とりわけ肌に重要なのが成長ホルモン。上質な睡眠をとり、成長ホルモンの分泌が促されることで肌の新陳代謝が活性化します。それは睡眠が肌の再生につながるからです。
ぜひ、今回紹介した7つの習慣をできることから実行してみてください♪睡眠を味方につけることが美肌への第一歩になります。
〈参考〉白川修一郎『命を縮める「睡眠負債」を解消するー科学的に正しい最速の方法』祥伝社,2018年
松本有記『睡眠障害の9割を改善した女性漢方医が教える上質な眠り』評言社,2018年
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