ウイルスが人を救う!?今注目のバクテリオファージ(機能編)
細菌に感染するバクテリオファージに関わる話として、1週目の歴史編、2週目の抗生物質編とご紹介してきました。
今回第3週は、いよいよバクテリオファージについて、その働きや役割をご紹介します。
抗生物質の間違った服用などにより近年出現している耐性菌ですが、抗生物質では対処できなくなってきました。
ウイルスであるバクテリオファージがどのように私たちを救ってくれるのでしょうか。
バクテリオファージ特集第1週(歴史編)はこちらから
バクテリオファージ特集第2週(抗生物質編)はこちらから
目次
- 細菌に感染するバクテリオファージ
- バクテリオファージによる治療
- バクテリオファージの可能性
- さいごに
細菌に感染するバクテリオファージ
ウイルスには、ヒトに感染するもの、ネコに感染するもの、トリに感染するものなど様々あります。
そして、細菌にのみ感染するウイルスをバクテリオファージといいます。
第2週でご紹介した抗生物質は、広範囲の細菌に効果を発揮するものがありますが、バクテリオファージはより特定の細菌を狙って効果を発揮します。
抗生物質を飲むとお腹を下すこともありますが、これは抗生物質が腸内細菌を攻撃してることが一つの要因です。
バクテリオファージは腸内細菌を攻撃することはなく、この面においては抗生物質よりも安全といえるでしょう。
バクテリオファージは、他のウイルスと同様に自身の遺伝情報を注入することで組織に異常をきたします。
異常状態となった細菌はこの作用により死滅することになります。
バクテリオファージによる治療
バクテリオファージの特徴から、抗生物質で対処できないような耐性菌の治療方法として研究が進められています。
もともと抗生物質発見の前から、「ファージ療法」とよばれるバクテリオファージを使った治療は検討されていました。
しかし、当時は基礎知識も少なく、ファージの純度や濃度に対する認識も不十分なまま使用したために、効果はバラバラでした。
安全性の面でも、エンドトキシンという細胞が死ぬときに出す毒素による副作用など、信頼性に欠けていました。
近年では、バクテリオファージに関する詳細な知見が蓄積されています。
そのため、新たな課題も生まれています。
細菌はバクテリオファージに対する様々な防御機構を持っているため、その防御機構を突破できるバクテリオファージは限られてきます。
バクテリオファージが体内に入ってすぐに体の組織、例えば唾液などで分解されても効果を発揮できません。
現時点で発見されているバクテリオファージは約1000種類程度で、より多くの病原菌に対応するためには、より多くの種類を見つける必要があります。
バクテリオファージの可能性
欧米では、すでにバクテリオファージを使った感染症治療の臨床試験が進められています。
長らく感染症に苦しみ抗生物質によって治療を行っていた男性が、バクテリオファージを併用することで完治したという報告もあります。
このように、バクテリオファージ単独ではなく抗生物質との併用により、効果を発揮する事例も出てきています。
これまでの研究の積み重ねにより最近では、バクテリオファージ自体を設計する技術も開発されています。
今まで天然でしか得られなかったバクテリオファージが、その細菌の種類に合わせて作り分けができるとあって非常に注目されています。
バクテリオファージのあらゆる研究が進み、細菌による病気の治療法として活躍する日はそう遠くありません。
さいごに
3週にわたってバクテリオファージをテーマにお話をしてきました。
ウイルスと聞くと抵抗感が生まれますが、中にはバクテリオファージのように人の役に立つウイルスもいるのです。
アメリカでは、2006年に食品添加物として認可されています。
ハムやソーセージなどで起こる食中毒対策として、バクテリオファージを添加し腐敗を防ぐというものです。
この他にも、畜産や農業における生物保護の方法としても期待されています。
バクテリオファージ、ますます目が離せません!!
参考文献
米崎哲朗, and 大塚裕一. “新世代のファージ研究.” 生産と技術62.3 (2010): 55-58.
matsuki_takahiro
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