胃腸炎を引き起こす最大勢力!ノロウイルスの感染と予防
牡蠣のおいしい季節になってきました。牡蠣の旬は11月~4月で、3月4月が一番おいしく食べられる時期だそうです。
そんな牡蠣を食べて食中毒になった経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
牡蠣のような二枚貝を食べて起こる食中毒は主にノロウイルス由来の胃腸炎です。
胃腸炎を引き起こす微生物には、カンピロバクターやサルモネラ菌などの細菌由来のものや、ロタウイルスやサポウイルスなどのウイルス由来のものがあります。
その中でもノロウイスルは、胃腸炎を引き起こす最大勢力になっています。
そこで今回は、ノロウイルスを感染と予防の観点で紹介したいと思います。
目次
- ノロウイルスとは
- ノロウイルスの感染と症状
- ノロウイルスの予防
- さいごに
ノロウイルスとは
ノロウイルスは、1968年にアメリカで発生した急性胃腸炎の集団発生由来患者の糞便から検出されました。ノロウイルスはウイルスの中でも約30nmと小さく、球形であることから当時は、小型球形ウイルスと呼ばれていました。
2002年に国際ウイルス命名委員会で「ノロウイルス」と命名され、日本でも2003年に厚生労働省の食品衛生法内で「ノロウイルス」と改められました。
当時まで発生していたウイルス性食中毒事例のほとんどがノロウイルスが要因でした。
ノロウイルスの特徴を以下に挙げます。
1) 感染力が強い
ウイルス粒子100個以下で感染し発病させることができると言われています。
これはインフルエンザと同等レベルになります。
2) 感染力の保持力が高い
ヒトから排出されたノロウイルスが下水→河川→海域→カキ→ヒトへと循環する間、感染力を維持しています。
3) 物理化学的抵抗力が強い
消毒用アルコール(濃度70%)である程度消毒するには5分、ほぼ完全に不活化するには30分が必要であるとされています。簡単に拭く程度ではほとんど不活化されないと思ってください。
このような特徴を持っているために、大流行しやすくなっているのです。
ノロウイルスの感染と症状
ノロウイルスはどのようにしてヒトに感染するのでしょうか?
冒頭にあるように、牡蠣のような二枚貝を生、もしくは完全に火が通っていない状態で食べた場合に感染の可能性があります。そのほかの二枚貝であるアサリやハマグリ、シジミなどは生で食べることがほとんどないと思いますので事例は少ないです。
そして、牡蠣による感染よりも多い原因が牡蠣以外の食品を摂取した場合になります。
これはつまり感染者が調理した料理や、感染者が触ったドアノブなどを介して食事中に感染しているということです。
また、感染者の排泄物(糞便、吐しゃ物)を処理する際などに、直接感染する場合もあります。排泄物中のノロウイルスが乾燥し、空気中に漂い口に入るといった流れです。
感染後、潜伏期間は12~48時間です。
主な症状は、吐き気・嘔吐、腹痛・下痢です。感染する部位である小腸の粘膜上皮細胞で炎症を起こし、栄養の消化・吸収の役割が上手く働かなくなり、下痢状態が引き起こされます。
ノロウイルスによる死亡例は極めてまれですが、これら症状によって引き起こされる脱水症状には十分に気を付ける必要があります。
そして、ノロウイルスの怖いところに、症状が消えたあとも長期的にウイルスを排出するといった特徴があります。これがノロウイルスの対策をするうえで難しい問題になります。
症状が消えた後でも、1週間程度、長くて1カ月ほどウイルスの排出が続くことがあります。
感染した方は、症状が消えた後も2週間くらいは調理等気を付ける必要があります。
ノロウイルスの予防
ノロウイルスの感染予防としては、現在のところノロウイルスのワクチンは開発されていません。
そのため、以下に挙げる二次感染に対する予防策が基本となってきます。
1) 加熱処理
牡蠣などの二枚貝の中心部が85℃で1分以上加熱されるように、牡蠣を調理した器具や、吐しゃ物の清掃に使用した布巾・雑巾などは、煮沸すれば感染力がなくなると言われています。
2) 手洗い
これはどんなウイルスや菌でも共通ですが、非常に重要な項目になってきます。
ハンドソープを十分に泡立てて、手指や爪の中、手首まで十分に洗い、流水で洗浄します。
手洗いの方法については、厚生労働省より資料が出ておりますので、ぜひ確認してみてください。
厚生労働省:感染性胃腸炎(特にノロウイルス)について:ページ上部
3) 消毒
吐しゃ物などが付着した床や壁などの環境や、処理時に使用した道具などは次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が有効です。市販されている塩素系漂白剤がそれにあたります。
市販の塩素系漂白剤の濃度は6%のものが多いです。これを使用する場合の調製方法を以下に示します。
4) 処理時対策
排泄物の処理を行う際がもっとも危険です。マスクや手袋、エプロンなど全身をまもる防護をします。
また、ふき取りに使ったペーパータオル、身に付けていた手袋などは速やかにビニール袋にいれ消毒液を噴霧し処分をします。
さいごに
ノロウイルスはこの時期、インフルエンザと並んで流行する感染症です。
ノロウイルスに感染しても症状が出ない場合もあります。この場合でも当然ウイルスの排出はあります。
また、ご紹介した牡蠣もすべてがノロウイルスを蓄積しているわけではありません。
まわりに感染者が出たときに適切な対処ができるように、そして自身も感染している可能性を自覚し、正しい知識を持っておくことが必要ではないでしょうか。
参考
西尾 治,秋山美穂,愛木智香子,杉枝正明,福田伸治, ら: ノロウイルスによる食中毒について.食品衛生学雑 誌,46, 235‒24 (2005).
中込治,: ロタウイルスおよびノロウイルス胃腸炎の感染制御. 小児感染免疫, 21.3, 235-243(2009).
厚生労働省HP:感染性胃腸炎(特にノロウイルス)について
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